映画・小説「国宝」の感想と創作イラスト
映画「国宝」、ものすごい話題になり邦画では久しぶりに興行収入が100億円突破確実と言われています。
私も上映時間3時間というのにはちょっと不安を感じたんですが、見に行ってきました。
もちろんいざという時のために端っこの席を予約。
映画は・・やはり圧巻でした!
主役喜久雄を演じる吉沢亮さんの踊り・そして独特の節回しなど本当に素晴らしかった。
喜久雄の友でありライバルでもある俊介を演じる横浜流星さん、そのお父さん半次郎を演じる渡辺謙さんももちろんのこと、俳優さんたちがすべてハマってました。
いや〜、俳優さんて本当にすごい!
小説との違い
この映画はもともと吉田修一さんの原作を映画化したものとのことで、小説を読むことにしました。
映画は3時間と長いですが、上下巻の小説を読むとそれでもかなり話を絞っていることがわかりました。
ただ単にエピソードを点々とつむぐというよりは、映画用に作り替えている箇所もけっこうあり。
(以下、ネタバレありです!)

たとえば喜久雄と少年時代、新年会で舞を舞った後に一緒にお風呂に入った少年(徳次)、映画ではさほどでもなかったけれど、小説では長期間公私に渡って喜久雄をフォローし続ける超重要人物だったり。
喜久雄の父の妻マサは喜久雄の実母ではなく後妻だけれど、喜久雄の活躍をずっと支え続けていたり。
実子の俊介よりも喜久雄の才能を評価して自分の代役・襲名をさせた半次郎はもちろん、そしてその妻幸子も、原作の中では悔しさを感じながらも喜久雄にできるだけのことをしてあげています。
映画はわかりやすく「才能か血か」というテーマに絞っていましたが、小説では「才能」が花開くためには決して喜久雄一人の努力だけではなく、根っこをたくさんの人が献身的に支えていたことが描写されていました。
ただそうはいっても原作では映画よりもさらに、喜久雄に対して「世間」は本当に残酷で、芸があったからこそ生きていけたのかなとも思いました。
逆に映画では○○と駆け落ちのような形でいなくなり、半次郎が亡くなった後にスッと戻ってきて栄光の座を手にしたように描かれていた俊介も、実は出奔している間に地獄を体験して、そこから死ぬような思いで這い上がり、人間的にも成長していたのでした。
喜久雄と俊介の運命もシーソーのように上がったり下がったりで、結局「才能か血か」というより、「芸に魅入られた人間とはどういうものなのか」ということを感じましたね。
「鷺娘」を描くことに
「国宝」を描きたい、と思った時にではどの場面を?と考えたところ、やはり一番印象に残ったのは、映画で最後に喜久雄が舞う「鷺娘」でした。
青の背景をバックに、舞い踊る白い鷺・・・
そのイメージをもとに、構図を決めました。
水彩紙にたっぷり水を含ませ、青の絵の具をたらしていきます。

ですが、「きれいな青」ではなく「深い青」のイメージだったので、濃い色を重ねます。

描写を加え、さらにデジタルで陰影を濃くし、完成。

この絵は、
孤独に「究極の芸」を極めていった人間だけに見える世界
を思い描いています。
映画の場面では決まったものしか出ていないため、実際の歌舞伎「鷺娘」なども参考にさせていただきました。
メイキング動画はこちらから↓
この後小説の中では俊介と喜久雄が共演する「光源氏」のエピソードもあり、そちらもいつか描いてみたいです。
小説や書籍の装画・挿絵のご依頼お待ちしています。
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イラストレーター翠唯(すい)
退職後、充電期間を経てフリーのイラストレーターとして活動中。
シズル感のある飲食物や、きらめき感のある情景を描きます。
企業PRイラスト、書籍や雑誌の挿絵・装画制作、教科書挿絵など実績多数あり。
得意モチーフ:飲食物、着物、制服
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